『たなからボタもち』
とある公立中学校 家庭科実習室。担当教師が不在なのか、廊下まで生徒たちの騒ぐ声が響いていた。
隣で、授業中だった英語教師の坂下は、たまりかね、家庭科実習室のドアを勢いよく開けた。
コラ!何を騒いでる。
あ、先生 居られたのですか。。。
どうもすみません。お騒がせしたみたいで。
あ、いえいえ。。。
独身の英語教師坂下は、昨年赴任したばかりの家庭科教師 森田絵美に見つめられ真っ赤になった。
で、一体何の騒ぎですの?
すみません。実習の材料 倉庫から持って来るの忘れちゃって。でジャンケンで決め持って来てもらったらイイじゃんって生徒たちが提案してくれ。。。
あはは何だそんなコトで。。
坂下は、ここは森田に良い格好を見せるのに絶好のチャンスとばかり、一気に舞い上がった。
材料て多いのですか
え まぁ。生地とか、ボタンとかの段ボール2個ずつ。。。
じゃあ僕がとってきます。
そんな とんでもないですぅ。
それに独りじゃあ無理ですわ。
坂下は、心が騒いだ。
(じゃあ一緒に行きましょう)の言葉をかけようとしたその時だった。
あろうコトか、今度は自分の教室が騒ぎ出していた。
あ、坂下先生、どうかお戻りになって。
ち。
仕方なく クラスを見渡し、
じゃあ戻るけれど、君ら森田先生に協力をお願いな。
は〜い。もちろんでぇ〜す。イケメン坂下先生。
クラスで一番の悪 田中健太がおちょくるような声を上げ、取り巻き連中がドっと笑った。
田中は中三のくせに身長が180センチもある。
坂下は、舐められてたまるか。と声を必要以上に張り上げた。
よーし、よくぞ言った。じゃあ君らが行ってくれるか。
え〜俺らだけかよ。
田中はクラス委員の長澤理恵を指差し、
ほんまは長澤の仕事やん とぼやいた。
指差しされた長澤は仕方無く立ち上がり、
では行って来ます。と言った。
あ、彼女独りじゃあ無理無理
坂下は 田中らを振り返り、先ほどより大きい声を上げた。
【田中らは、ボタン持ち】
たなからは、ボタンモチ
たなからボタもち………
(-_-;)